H-2023/09/09 オートファジーとアンチエイジングについて

オートファジーとは、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士大隅良典 – Wikipediaがメカニズムを解明したことで知られる現象、簡単に言えば、「細胞の中のものを回収して、分解してリサイクルする人体の仕組み」のことである。

こう書くと「ふーん、まあ、人体でそういうこともあるんだろうな」程度にも思えるが、良く考えると、人体のとても不思議で精巧な不可欠なメカニズムの一つだ。人間(体重60kgの場合)は、1日で240gのタンパク質をオートファジーによって毎日合成しているらしいが、食事から摂取するタンパク質は約70gにすぎないから、驚きだ!

若干詳しく説明すると、飢餓状態に陥った時などに細胞内の不要なタンパク質をオートファゴソームという膜で包み込み、その膜をリソームと結合させてタンパク質を分解して再利用(リサイクル)、つまり新陳代謝する。また、異常なタンパク質が蓄積されないようにするなど、生体・細胞の恒常性の維持や免疫機能にとっても重要な役目を果たすメカニズムだ。

さて、ノーベル賞を受賞した、大隈教授は有名だが、その弟子で、LIFE SCIENCEはじめに:『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』 | 日経BOOKプラス (nikkei.com)を書かれた吉森保教授も有名で、YouTubeなどでも健康寿命やアンチエイジングについてもいろいろと発信している方だ。

吉森教授は、2019年にオートファジーにブレーキをかけるタンパク質「ルビコン」の発見についても発表しており、このルビコンは老化とともに増えるということである(将来のノーベル賞候補?)。そして、実験によれば、ルビコンをなくした線虫やハエの実験では、オートファジーが活性化され老化が止まり、寿命が20%伸びたそうである。

オートファジーの活性化を効果的に促す薬や医療は今後の研究を待ちたいが、現状できること、つまり日常生活の中で、ではどうオートファジーを活性化させることができるか?あるいは、「ルビコン」の分泌を抑えることができるのか?

吉森教授の前述の本によれば、以下のような紹介があった。

まず、オートファジーを活性化させる食事。「スペルミジン」というタンパク質より小さいポリアミンの一種が有効で、納豆、みそ、醤油、チーズ、キノコにこの成分が含まれているそうだ。特に納豆には多いとのことである。また、お茶に含まれるカテキン、サケ、いくら、エビなどに含まれもる「アスタキサンチン」もオートファジーを活性化するそうだ。また、ぶどうや赤ワインに含まれる「レスベラトール」も効くそうである。

生活習慣としては、プチ断食やカロリー制限が有効である。そういえば、「オートファジー断食」とか「16時間断食」などが流行っているが、吉森教授は極端な断食は決して勧めていない。そして、勿論適度な運動も重要とのことだ。

つまり、結局「腹八分目で、運動する。脂っこい食事を避ける(そして納豆を食いまくる)」という普通のことに尽きるのだろう。

なお、オートファジーの活性化と並んで、アンチエイジングに有効な機能がサーチュイン遺伝子の活性化である。これについては、また追って触れてみたい。

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